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狂乱壊
荒らし・迷惑行為・中傷などはおやめください。(それらに準ずるコメント類もこちらの一存にて削除させていただきますのでご了承ください)

そして物語の准章は愛し子として手を差し伸べる






















「………。」






無言のまま、相手の拘束を解く

周りの狂わせた空間も操作して、彼が支配していた空間を再現させた
眼の前にいる彼は戦闘意欲が消失したのか反撃はしてこなかった
私は彼と眼を合わせるために、膝を下ろし地面につけた



「………っくそ………っ!!」

「無駄です。一時的に貴方の力を封じさせていただきました。ここでは貴方は私には勝てません」



睨み付けてくる彼に冷静にそう伝えると、酷く不愉快そうに眉間に皺が寄った
人間の小娘にまんまとだまされたと怒っているのか、殺生丸様と戦う前に敗北したことを悔しがっているのか知らないが、彼の意識は完全に師匠から外れ、私だけを見ていた



「――― 殺すなら殺せ。」



悔しげに、だがはっきりとそう伝える彼は潔かった。そんな彼を見ながら、私は首を横に振った



「………いいえ。殺すつもりはありません。ただ、一つ答えていただきたい」

「………。」

「…西国の支配。それが一族の、祈願だといいましたよね。では、貴方は?
一族の祈願達成が貴方のお望みですか。貴方自身のお望みは、何なんですか?」




彼の眼が見開かれた

聞かれたこともなかったと言わんばかりのその表情に、確信を得ながら、私は彼に手を差し出した




「教えてください。私は、貴方に酷いことをしたくない。殺生丸様に手出しをしないと約束してくださるなら、出来うる限りの協力はさせていただきます」



彼と話しているときに感じた違和感が何だったのか、ずっと心に引っかかっていた。それが、今分かった。



―――― この死神鬼さんは、私と普通に会話をしてたのだ


大抵の妖怪は、人と話すことはおろか、話を聞くことなんてしない。はなから相手を見下しているからだ
誰かと話す。この死神鬼さんは、今までそれさえ満足に出来なかったのだ。だから、私と普通に会話した。事情を話した。ずっと、閉じ込められていたから

考えるように、戸惑うように、彼が俯きながら言葉を探している
私は、彼の言葉をただ待った





「……俺は、世界を見たかった」

「………。」
















「―――― 自由に、なりたかった」



















その言葉は、切実だった






自由。










その言葉に、彼女の姿が脳裏をよぎった




その所為だろうか













「だが……っ!!」












――― 反応が、遅れた





差し伸べた手を振り払われた

そして伸びて来た手に首を捕まれそのまま地面に叩きつけられる
私に馬乗りになりながら、彼は凄い剣幕で私を怒鳴りつけた



「貴様には分からんのだ“殺生丸の愛し子”っ!!
お前のように愛し愛され、庇護され守られているものに……っ!!恵まれたものには分からんのだっ!!
何も持っていないものの惨めさなどっ。そんな存在にとって、手に入れた立場がどれほど大切かなどっ。手に入れたものを守ろうとする気持ちなど、分かるはずがないのだっ!!」



罵倒を浴びせられながら、容赦なく首を絞められる
凄い握力で、そのまま首の骨を折られるかと思った
彼の手首を掴んで引き離そうとしたが、当然のようにピクリとも動かなかった



頭に血がのぼる。眼の前が認識できない























「――― 言いたいことは、それだけか?」





師匠の、殺生丸様の声とともに










肉を貫く、音がした








「…な、……っ!?」





死神鬼さんの眼が見開かれ、首を絞める手の力が緩み、そのまま離れた

私は気道に入ってきた酸素を必死に吸い込み、咳き込みながらも息を整えた
落ち着いてから、状況を把握しようと頭を動かす

苦しむ死神鬼さんの背中に、漆黒の刀が突き刺さっていた。いつの間にか、師匠が私の呪咬刀を抜き取り、彼の背に突き立てていたのだ
師匠が呪咬刀を抜き取ると同時に、コボリと彼が吐血し私の喉から胸元にかけて、勢い良く血がかかった



「……お、れに……何をしたっ……!?」



震える手で、なんとか身体を支えながら師匠を振り返る
本来、この程度の傷で妖怪がここまでダメージを負う事はない。が、この場合刺された獲物が悪かった
背中の刺された部分から彼自身の妖気がもれ、呪咬刀に喰われていた




「――― 呪咬刀。またの名を妖殺しの刀
これに切りつけられたものは妖気や邪気を根こそぎ食らい尽される
一太刀だけでも、妖怪にはひとたまりもないだろう?」

「………っ!!」



口を開いた彼はまた何かを言おうとしたようだが、それは分からなかった。再度開かれた口から出たのは、どす黒い血だけだった



「………呪咬刀の、新たな糧となれ。死神鬼の片割れ」



呪咬刀の中から、黒い妖気が満ち溢れる
呪咬刀が、新たな餌として認識した彼を取り込もうとしている
彼の綺麗な顔が、腕が、胴が、足が、少しずつ食い千切られるように消失していく


勝敗を、自分の死を悟った彼は師匠ではなく、私を睨みつけた



血を吐きながら、それでも私に叫び続ける




「所詮っ、貴様のそれは高みからの発言だ……っ!!」



彼の血が私の着物に滲む

手で支えきれなくなった身体を、彼は必死に動かす。私の身体の上から重みが消えて、隣に身体がドサリと横たわった






――― それでも、鋭い目つきは未だに私を睨んでいた
















「―――――― 俺を哀れむな……っっ!!」







命を削るように、絞りだすように、吐き捨てられた言葉





それが、最大の侮辱だとばかりだった























その後の彼はあっけなかった
そのまま呪咬刀に飲み込まれ、彼のいたはずの場所は、まるで最初から何もなかったように跡形もなくなっていた




「………。」




ムクリ、と起き上がる。着物を触るが、彼の血痕は跡形も無くなっていた。呪咬刀に根こそぎ吸われたらしい

場が、静寂に満ちた



「浮かぬ顔だな」



死神鬼さんを吸収した呪咬刀の刃を確認するように見つめていた師匠が、横目で私をちらりと見やった。私は力なく座り込んだまま、彼がいたはずの場所を見た



「………ねぇ師匠。」

「何だ」

「私の彼へのこの思いは、やっぱり同情だったのかな」

「そうだろうな」



あっさりと言われた



空を見上げる
藍色の世界は閉鎖された空間だからか、密閉されており一切の風の流れが無かった
それでも、私は主人を亡くした空間を見上げ続けていた



「……“自由になりたい”って言われて、神楽ちゃんを思い出した。神楽ちゃんとあの彼は、同じなのかなって」

「………。同じ?」



不可解そうだった



死神鬼を吸い尽くした呪咬刀を鞘に収めながら言った



「傀儡の立場に甘んじる輩と、立場を捨てても自由を求める輩の、一体何処が同じだ?」

「………。」






同じじゃない。それは天と地ほどの違いがある。












でも………――――













そんな私を見て、未だ殺生丸様の姿をした師匠は呆れるように眼を細めた



「いい加減、見も知らぬ相手に情けをかけるのはやめろ。深く関われば本来の目的を忘れかねんぞ」

「仕方ないでしょ。人間だもの、目移りくらいするよ。横道にだって逸れるよ」

「…………。」

「……力になって、あげたかったな」

「よく分からん感情だ」

「師匠には分からないよ。自分の非力さに嘆く奴の気持ちなんて」



卑屈になりながら、口角を釣り上げると、師匠はただ、ふむ。と頷いた



「確かに、わからんな」

「素でそーゆーこと言う辺りがほんっとムカつく」



一度だけ、ため息を着いた


一度だけ、眼を閉じた





――――――――――― 一度だけ、彼を祈った












眼を開けて、気持ちを切り替えてから私は立ち上がった



いつまでもこの空間を保持しておくわけにもいかない。元の空間を再構成しないと、また更にこの世界に悪影響が出る



「かごめちゃん達、大丈夫かな……」

「放っておけ。死神鬼は倒した。奴らがこの空間で受けた傷も浅い。本来の時空間に戻れば心身ともに回復する」

「でも………」

「そんなことより、早くこの空間を閉じてあの洞窟の邪気を浄化しろ
奈落と死神鬼の邪気が蓄まり混ざっている。あそこに死者の汚れでも入り込んだら更に面倒なことになるぞ」



師匠にピシャリとそう言われて、私は慌てて死神鬼さんが作り上げた空間維持を解除する
空間が再構成され、本来の草野原に茫然と立ち尽くしているかごめちゃんと琥珀君を一度だけ振り替える



二人に怪我が無いことを確認してから、私は鬼蜘蛛さんの居た洞窟に向かった

















































































































**************************





















「…………。」



何が起こっていたのか、よく分からなかった
全てが終わったらしい今でさえ、状況が飲み込めていなかった



殺生丸様が洞窟の方へ向かっていく
その姿をただ見ていることしか出来なかった





「…ねぇ、琥珀君」

「…何でしょう。かごめ様」



かごめ様が話しかけてきた

多分、俺と同じことを、同じ疑問を持っているのだと思った









――― やはり、問われたのは俺が抱いていた疑問と同じだった





「……お義兄さんと死神鬼以外に…、――――― 誰かいた?」



「………いいえ。俺には何も見えませんでした」



「そうよねぇ……」



かごめ様が頷く







殺生丸様も、死神鬼も、ずっとそうだった




まるで、誰かを示唆しているような発言
まるで、もう一人誰かがそこにいるような言動をしていた

冷静に、だがどこか困惑した様子で、かごめ様は首を傾げた



「―――― お義兄さん、誰のことを言ってたのかしら?」


















だがあの空間には、俺達―――― 、殺生丸様、かごめ様、俺と死神鬼の他に



































―――――― 誰も、いなかったのだ




















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  1. 2013/07/25(木) 23:04:21|
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