『一輪の薔薇を拾った無責任な男』その②
妙にかたよった知識を持った子供だと思った
フェイタンが目覚めた時、ベッドが異様に狭く感じた
そして、同時にいつもより暖かかく感じた
眼を覚ましたフェイタンの視界に映ったのは、同じ掛布の中ですうすうと寝息をたてて眠っている子供の姿だった
それを見て、一瞬子供を蹴り落とそうとしたフェイタンだったが、そう言えば昨日拾ったんだったなと思い出してすんでのところでとどまった
フェイタンが体を起こすと、まるでその動きと連動するように、長い瞼に覆われていた子供の大きな瞳がパッチリと開いた
過敏なのか神経質なのか、
何にせよ感覚は鋭いんだなと思った
「………起きたか」
「………。」
子供は何も言わない。
と思ったら、フェイタンの前で正座をしたかと思うといきなり頭を深々と下げた
「―――― おはようございます。御主人様」
「は?」
唐突な子供の発言、それに予想外の発言にフェイタンは耳を疑った
しかし、顔をあげた子供は至極真面目な顔をしてフェイタンを見上げている
一発拳を向けようかとも考えたが、低血圧なフェイタンにとってそれさえ億劫な行動だったのでやめた
「その呼び方はやめろ。私にそんな趣味ないね」
趣味って何だ。と、思ったかどうかは知らないが、子供は不思議そうに眼をパチパチとさせた
「じゃあなんて呼べばいいんだ」と言いたいのだろうなと思い、フェイタンは少し考えてから口を開いた
「フェイタンでいいよ」
「……フェイタン」
「そう」
「……フェイタン、様」
「“様”もいらないよ。お前私を馬鹿にしてるか」
「……ごめんなさい」
別にキツく言ったつもりはないが、起き抜けで声が低いせいだろう
子供は深々と頭を下げてすぐさまそう謝ってきた
しかし、恐がられていることなど慣れているフェイタンは、子供を怖がらせたことへの罪悪感などまるで感じずそのまま話を続けた
「お前、名前は?」
「名、前」
「そう。名前」
「………」
「………。」
途端、子供は口を閉ざしてしまった
このくらいの幼児なら、名前を忘れた。と言うことはないだろう
言いたくないのか、それとも元から無いのかフェイタンには判断できなかった
しかし、しばらくしてから、子供は口の開閉を始め、やがてポツリと呟いた
「カ、ルト」
「?」
「カルト、です」
「ふーん」
気の無い返事をする
『カルト』
初めて聞いた名前だったが、この子供がどの国のどの地域の子供だったのかなど微塵も興味のないフェイタンはそのままベッドを降りた
コーヒーメーカーで入れたコーヒーを飲んでいると、子供にも餌をやる必要があることを思い出して、フェイタンはコーヒーを飲み干した
子供は、カルトは何も言わない
ただフェイタンの行動を見ながら指示を待っている
フェイタンはほったらかしていた服の山から自分の着れなくなった服を見つけだした(流星街では、こういう古着もかなり高く売れる)
それを全裸だったカルト向かって放り投げ、着るように命令し服を着たカルトを眺めてみる
ぶかぶかだが、まぁワンピースに見えないこともない
「出かけるよ。ついてこい」
「はい。フェイタン」
そう言ってフェイタンは、カルトの手を引き流星街の街へとくりだした
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「はい。お母さま」のノリで
流星街の町並みとか風習とか暮らしとか全然分からないので、この先完璧偽造です注意(今更)
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