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狂乱壊
荒らし・迷惑行為・中傷などはおやめください。(それらに準ずるコメント類もこちらの一存にて削除させていただきますのでご了承ください)

ユノの祝福は誰の夢を現実にするか

『ユノの祝福』シリーズその⑨

ちょっと注意(何が)

一応これが最終話です





















「――― 幸せ?」













それは、聞き捨てならないとばかりだった








実際、フェイタンはカルトの首を押さえ付けて睨み付けてきた
気道を圧迫こそしないものの、カルトの力では抜け出せそうにない、強靭な力だった





「お前の幸せをお前が決めるな。何様ね」





お前こそ何様だ



彼の言っている意味が分からなかった
怒っているのはフェイタンではなくこちらなのだ
フェイタンに怒られる筋合いなど欠片もない

その気持ちを表すかのように睨み返す










しかし、次のフェイタンの言葉によってその表情は一瞬で取り払われた






















「――― お前は私のものね。お前の幸せは私が決める」











静かに発せられたその言葉に、思わず耳を疑った



抵抗することも、意図を聞き返すことさえ忘れた





そう、そう言えば、先程も意味が分からないことを言っていた気がする
カルトの頭の中につい先程の出来事が思い浮かぶ

………確か、彼は『選べ』と言っていた気がする。










(………、――― あの時、彼はいったい何を、『選べ』と言っていた?)















そう。そもそもこの状況が、事実と噛み合っていない








カルトにしてみれば、フェイタンに怒られる筋合いは欠片もないはずだ
フェイタンがカルトに対し、こんなに執拗になる理由もないはずだ















―――― しかし、なんだこれは。







カルトがぐるぐると考えている間にも、フェイタンは眉を寄せたままだった
どこか納得していない様子だった
否、『何故気付かないのか』と、強く強調するかのようにこう言った



















「お前の幸せは、私といることね」












なんだこれは。











フェイタンはカルトに興味が無いはずだ
そもそも、彼は気紛れで自分と付き合っていただけで、最悪、自分と付き合っていることすら忘れていたとしてもおかしくない、その程度の認識だったはずだ

しかし、全てが終わり、もうフェイタンはカルトの彼氏ではない
つまり、フェイタンにはもうカルトを気にかける理由が無いのだ






そのはずだ







なのに、これではまるで、フェイタンがカルトに執着しているかのような口振りだ
あの花婿に嫉妬しているかのような物言いだ





















―――― カルトが他の男と結婚することが、気に喰わないかのような態度だった








「まぁ、逃げたければ逃げればいいね。逃げられるもんならな」






逃げるならどこまでも追いかけて捕まえる
誰かに奪われたとしても取り返す
そもそもお前の実力じゃ私から逃げるなんて出来るはずがない
やれるもんならやってみろ







――― そう言うフェイタンには、鬼気迫るものがあった。

が、カルトはそれどころではなかった


あの淡泊なフェイタンが、まるで独占欲と妄念の塊のようだった
それを自分に向けているそれが更に信じられなくて、受け入れられなかった









しかし、フェイタンの狂言はそれだけでは終わらなかった













「―――― 脱げ」

「、っは?」

「他の男の匂いなんかさせるな」




いきなり意味が分からないし、理不尽すぎる発言だった



大体、『他の男の匂い』?まさか、このドレスに染み付いた返り血のことを言っているのだろうか。カルトにはそれしか思いあたることはなかった
しかし、自分には血なまぐさい鉄の匂いしかしないし、そもそも血の匂いだけでそれが誰の血かなんて判別できるものではない
と言うより、純白のドレスを血染めしたのは他の誰でもないフェイタンである
あまりの理不尽さに、自分にどうしろと。とばかりに顔を歪ませたカルトに対し、ドレスを血まみれにした張本人は、理不尽にも本当に不愉快そうだった











そして次の瞬間には、カルトの黒紅のドレスは一瞬にして力任せに破り捨てられた
最高級の絹糸で出来たウェイディングドレスは一糸残らずカルトの身体から取り払われた
下着だけにされたその暴挙にカルトが反応を見せる前に、フェイタンが抵抗を押さえ付けるかのように、今度はカルトの腹を撫でながら低い声でボソリと呟く











「――― いそ、今すぐお前を犯して、孕ませでもすれば安心なのか?」


「………っ!!」












思わず顔を引きつらせた






カルトの眼に至極真面目な顔をしたフェイタンが映る
今の自分の状況が別の意味で危険にさらされたのだと察しても、既に遅い


殆ど素肌を曝した無防備な姿で心もとない上に、体制も圧倒的に不利
無意識に体を後退させようとするが大木に邪魔をされてそれも出来ない
年相応に発達した体の線を確認するように軽く撫でられて、カルトの体がビクリと震えた







―――― 逃げ場など、なかった



















「――――……とは言え、カルト。私にも良心はある。さきはあぁ言たけど、一度くらいは選ばせてやるから選ぶといいね」

「………っ?」








そう言ってフェイタンは、先ほどカルトが答えそびれた質問をもう一度言った

















「――― 私を選んで生き延びるか、あの間男を選んで死ぬか。選ぶね」


「………。」


「――― あぁ勿論、私を拒んで、それでも生き延びたいて言うなら、実力行使でそうしてもいいよ」















フェイタンはそう言うが、



























実のところ選択肢などないのだと、すぐにカルトは察した











カルトはあの花婿に未練など全くない

カルトにとって、あの男と結婚しようと思ったのは所詮、“母が選んだから”と言う理由しかない
そうでなければあの花婿は、カルトにとってその辺の塵芥の輩と何ら変わらない存在でしかなかった



ゾルディック家の為ならいざ知らず、あんな赤の他人の為に死ぬ気などカルトはさらさらない






かと言って、カルトの実力ではどうやってもフェイタンから逃げることなど出来ない

今までだって鍛練を怠ったことはない
昔に比べれば成長していると言う自覚もあるが、それでも彼と比べれば実力はカルトの方が下だ
その差は歴然。実力の差なら、カルトは嫌というほど知っている





「…………。」




「―――― さぁ。選べ」













それは、選択を迫る。と言う生易しいものではなかった
まるで、死の宣告でもするかのような迫力があった



























―――― しかし、それは第三者の眼で見れば。の話である























しかしカルトにとって、それは全くそうは見えず感じなかった






フェイタンの言葉で、カルトは、ただ自分の中で、何かが壊れる音を聞いていた




















―――― 崩れていく



ガラガラと、カルトの中で音を立てて崩れていく





ゾルディック家の為に身を捧げると誓った
その為にフェイタンと別れ、あの花婿と人生を歩むと決めた



そう決めたはずだったのに、その確固とした誓いが、覚悟があっさりと崩れさっていく







兄と姉の言葉でも微塵も揺れ動かなかったそれは、フェイタンの言葉でいともたやすく、跡形もなく崩れ去った





















狂気じみたフェイタンの言葉は、カルトにはまるで過剰で熱烈な愛の告白のようにしか聞こえなかったのだ
























――― 泣きそうだった。嬉しくて


――― その瞳を直視できなかった。気恥ずかしくて











それでもカルトは返す言葉を律儀に探した

しかし、あまりの想定外の出来事に、頭の中の要領が既に限界で、整理するのも手いっぱいだった












戸惑うカルトの姿は、見る相手によってはただの無表情に見えたかもしれない
しかし、フェイタンには分かる

いつもは白いその頬が、ほんのり上気していて、その耳は眼に見えて紅潮している
熱烈を通り越したフェイタンの言葉に、カルトは恐怖ではなく、ただ喜びしか感じていなかった
そんなカルトの心境が手に取るように分かり、フェイタンは少しずつ落ち着きを取り戻していった




カルトの心は、未だフェイタンにある





その事実を察し、フェイタンはドレスを破り捨てはしたものの、それ以上何もしなかった
















逃がさないとばかりに抑えていた手をさっさと離すと、自分の服を脱ぎカルトにかぶせるようにして着せた
いきなりのことに思わずきょとんとした表情を見せるカルトに、フェイタンは一度溜息をついてから、カルトの頬を包み込んでから仕方なさそうに言った



「大体、何が幸せか。その顔のどこが幸せね」



旅団にいる時はもっとマシな顔をしていた。そう柔らかな声色で言う彼に、もはやカルトは現実が信じられなかった。夢を見ているとしか思えなかった














―――― そう、夢だ。








きっと これは夢だ















自分に都合の良い、夢






















「お前の幸せは、私しか与えてやれない。お前が本当に幸せになりたいなら、どうすればいいか分かるよな?」


「…………。」













夢なら、醒めないでほしい





醒めるくらいなら、いっそ死んでもいいとさえ思った


















「さぁ、選ぶといいね」








しかし、『選べ』と言われたところで、先にも言ったように、カルトに選択権などまるでない
実力の差はもちろんだが、――― なにより、カルトがフェイタンを本気で拒むことなど出来ないと、既に彼は知っているからだ
カルトの心がフェイタンにあると、一番分かっているのは当の本人なのだから




それを全て分かっているくせに、そんなことを言ってくるのだ






カルトは思わず頭を抱えた














ずるい
卑怯だ
横暴だ














それでも、フェイタンへの想いは一向に冷めてはくれなかった












「………フェイタンってさ」

「あ?」

「ほんっとうに性格悪いよね」

「でもお前、私が好きなんだろ?」

「~~~むっかつく………っ!!」






ずるい
卑怯だ
横暴だ







なのに、こんな言葉が嬉しいなんて、重傷だ



それでも、喜ぶ以外なんて出来なかった












































――――― 結局、折れたのはカルトの方だった





フェイタンと共に、大人しく出口へと向かう
その道中、フェイタンは何故旅団がカルトの結婚式を妨害しに来たのか説明してくれた

カルトの結婚式を妨害した理由。それはカルトの察した通り、団長命令だった
どこからかカルトが政略結婚させられる情報を手に入れた団長は、全団員を集め、一言「ブチ壊せ」と、そう命じたそうだ



「――― そう。やっぱり団長命令だったんだ」

「あぁ。お前が政略結婚させられるからとめろと。皆、天下の暗殺一家相手に暴れられるて言て、血が騒いでるみたいだたよ」

「それであの男を殺して僕をさらったんだ」

「いや、それは私の独断ね」

「……そう、なの?」

「あぁ。見てて面白いもんじゃなかたから思わずね」

「………。」





そんなことを、恥ずかしげもなくあっさり言うものだから、思わず頬を抑えた
冷たかった掌が頬の熱で急速に暖まっていく。それでも、やられっぱなしと言うのは、なんだか負けているみたいで嫌で、せめて口喧嘩くらいは勝ちたくて、必死に嫌味を口にした





「っ何が『面白くなかった』だよ。そもそもフェイタン、僕に興味なんかなかったくせに」






デートはしたけれど、それ以外は何もなかった

キスもしていない
もちろんそれ以上のことも

清く正しく。と言えば聞こえはいいが、それではちゃんと付き合っているかも曖昧だと言われても仕方がない
フェイタンと付き合えることに浮かれきっていた、一緒にいるだけで幸せだったあの頃は、微塵もそんなこと思わなかったが、フェイタンと別れてから冷静になって思い返してみて、やっとそのことに気が付いた

そんなカルトもカルトだが、フェイタンも全く非が無いわけじゃないと思う








しかし、フェイタンはやはり微塵も悪びれる様子はなかった
むしろ、堂々として言い放った








「そんなん当たり前ね。私にガキに手を出す趣味はない」

「それは、確かにそうだろうけど……。でも、それならホント何でこんなことしたの?自分が捨てるのはいいけど、捨てられるのはプライドが許さないって?」





フェイタンが政略結婚のことを知って、こんな強行手段に出た
それは、カルトを惜しんだ訳ではなく、ただの反射的な行動だったのではないか


逃げられたら追いかけたくなる
抵抗されるから煽られる


彼の行動は、そんな、一種の気の迷いではないのか
カルトがフェイタンに気持ちを向けた途端、蝋燭の火が消えるようにフェイタンはまた自分に興味をなくすのではないか




そんな自分の一抹の不安がにじみ出たことに、カルトは気付いていない















しかし、フェイタンはその言葉を聞いて、隣にいるカルトの腰を強引に引いて、その華奢な体を抱きしめた





























「―――― お前を失いかけて、やとお前の大切さが身に染みて分かった」


「………っ!!」



































「――― とでも言えば満足か?」










あぁダメだ。幸せすぎる



そう思った瞬間には口付けられた

























―――― 初めてのキスは、涙の味がした







けれど、それは自分が思っていた以上に、神聖なものだった



















―――― キスをした場所は、教会ではなかった


ウェディングドレスは血まみれになり破り捨てられ、ベールもブーケも何もない















それでも、カルトは幸せしか感じられなかった


























――― 先程のくすんだ世界が嘘のように、今のカルトの世界は、美しく鮮やかに色づいていた
























































(――― そう、それはまさしく 女神ユノの祝福のように)















**************************













誓いのキスがファーストキスとか、カルトちゃんならありえそう



テーマは『フェイタン流・飴と鞭』
飴と鞭、に、なってるといいな……!!(←)




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  1. 2013/06/01(土) 16:38:32|
  2. H×H|
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