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狂乱壊
荒らし・迷惑行為・中傷などはおやめください。(それらに準ずるコメント類もこちらの一存にて削除させていただきますのでご了承ください)

そして物語の准章は忌み子に蝕む毒を告げる






















「――― お困りの様だな。神威」





そう言って背後をとった人物を振り返ると、予想通りの姿が映ったので、真剣に考えていた頭の中が一気に分散され、思わず溜息をついた


「師匠……」



いつものように、奈落さんの姿でニマニマと作り笑いを浮かべている。暗い闇の中のはずなのに、何故か一際存在感を感じた。もしこの場に師匠の存在を知らない人がいたら、恐らく師匠のことをこの冥界の主と勘違いしたかもしれない。そう思うくらいには













――― 勿論、ここに第三者がいたら。の話だが。







師匠がいきなり現れるのにすっかり慣れたのか、神楽ちゃんは臆する事なく師匠を睨み付けた



「……てめえ、どうやってここに」



先程も言ったが、冥界に来る方法は限られている。しかし、いきなり何の苦もなく、当たり前のように冥界に現れた師匠を見て、神楽ちゃんは疑いの眼を向けていた。しかし、師匠はその疑惑の眼を軽く笑って受け流した


「ははは。神威あるところ、わし有りだ」


奈落さんの姿のまま、変なキャッチフレーズを言わないでほしい



「……どうしたの師匠。茶々入れなら後にしてくれない?」



人がせっかく真剣に考えているのに水を差しやがってとばかりに睨みつけるが、師匠は全く意に介さなかった



「そう怒るな。ただでさえ見るにたえん顔が更に台無しだぞ」

「ぶっ殺されたいの?」



本当に冥界送りにしてやろうかと呪咬刀を握り構えるが、師匠は片手でヒラヒラと手を振るだけだった



「冗談だ。洒落のわからん奴だ。そんな弟子に育てた覚えはないぞ」

「うるさい。こっちはいっぱいいっぱいなのよ。大体何で出てきたの?」

「安易にあの男の前に出ると、首を刎ねられかねんからな」



どうやら殺生丸様がいなくなるのを待っていたらしい
そしてそんなことを言う師匠に、私はもはや言い慣れた台詞を言った



「だからその姿やめれば……って、まさか師匠。これも師匠が絡んでるんじゃないよね……」

「ははは。そんなわけないだろう」



………嘘臭いなぁ……


神楽ちゃんと同じ疑惑の眼で師匠の顔を観察してみるが、涼しい表情を見せるその眼からは全く何も分からなかった。しかし、私の中で現段階で一番怪しいのはやはり師匠だった。何せ、前科がありすぎる



「信用ならん。と言う顔だな神威。わしがお前に嘘をついたことがあるか?」

「つきまくってるじゃない。まるで自分の言うこと全てが嘘偽りだらけと言わんばかりに」

「ははは。言うようになったな」



何げに否定しなかったな……。

にしても、どうせ師匠のことだ。ろくなことを考えていないに違いない。私は早く殺生丸様の言い付けどおり、神楽ちゃんを無事に安全な世界に連れ帰らないといけないのに………



「そう邪険にするな。せっかく助けに来てやったのに」

「?助け?」

「そうだ。」



一瞬何を言われたのかよく分からなくて、思わず聞き返した。師匠がそう言った瞬間、師匠の後ろの空間が歪み、人が通れるくらいの円を描いたと思うと、そのまま空間が元の世界に繋がれた。円の向こうからはあの嫌な気配が漂い、あの山の薄暗い風景が見えた



「これを使えば冥界を抜け出し、元の世界に戻ることが出来る。急いだ方が良いぞ?」

「あ、ありがとう師匠……」



珍しく気の効く行いをする師匠に、私は一瞬で気をよくし、何の疑いもなく師匠の作った出口に足を踏み出そうとした。が、それは後ろから私の腕をつかむ神楽ちゃんの手で阻止された



「?どうしたの?神楽ちゃん」

「待て神威。罠かもしれないだろ」



振り返ると、凄い疑心暗鬼になっている神楽ちゃんがいて、私は一瞬きょとんとしてから安心させるように声をかけた



「大丈夫だよ神楽ちゃん。師匠はそんなことしないよ。それに、あっちはちゃんと元の世界のあの山だよ」



気配を確認する迄もない。師匠が開けた穴からまるで風船の空気が抜け出るように、あちらの山の嫌な気が冥界の中に漏れ出ている。そして冥界の闇とその嫌な気が交ざり合って更に増悪し増殖してから山の中に戻って………―――。

















(―――― あれ?)










妙なものを見て小首を傾げる私を余所に、嫌な笑いを浮かべる師匠と半信半疑の神楽ちゃんはまだ睨み合ったままその場から動かなかった



「………。」

「案ずるな女妖怪。わしは何の小細工もしていない。そんなことをせずとも、貴様らなどいつでも葬れるしな」



またそうやって人の警戒心とかプライドとか逆撫でするようなこと言う……。

案の定、気分を害したと言わんばかりの神楽ちゃんに更に厳しい眼を向けられている。しかし、師匠はまるで表情を変えなかった



「それに、」



そうして、まるで無知なものでも見るかのように神楽ちゃんを見てから、冥界の闇の中に視線を移した


















「――― お前は、この世界にいるべきではない」
















「………あ?」

「ここは死者の世界。生きている人間はおろか、妖怪とて長居すればただではすまん。しかも、一度死んだ身であるお前は人間何ぞより簡単に冥界の闇に呑まれるぞ。もう一度この闇に呑まれれば………」

「………。」




















「――― もう、戻れん」








「………。」




ずい、と顔を近付ける師匠に神楽ちゃんは一歩後ずさり顔を強ばらせた



「…ちょっと師匠。神楽ちゃんをいじめないでよ」

「何を言う。親切に忠告してやっているだけだろうが」


嘘だ。今のはどう見たって説得ではなく脅しである



























そうして、何とか神楽ちゃんを説得して、師匠の造ってくれた時空の穴を抜けて何の問題もなく元の山に戻ってきた。しかし、その地に足を踏み下ろした途端、私は吐き気を催して思わず手で口を覆った。いきなりの私の反応
に驚いたのか、神楽ちゃんは訝しげに声をかけてきた



「?おい。神威?」

「………なんか、この嫌な気……」

「………。嫌な気?」
















――――― 酷くなっている。








匂いとかがあるわけではない。視認ができるわけでもない。が、山に漂っていた嫌な気は明らかに凶悪になっていた。まるで肌にまとわりつくような嫌な感覚に、軽く車にでも酔ったような気分を覚えて、私はその場に軽くうずくまった。が、しばらくするとその酔いも納まってきたので、恐る恐る口に当てていた手を離して立ち上がる。酔いがぶり返してくることはなかったが、さっきより酷い違和感が充満しているのは明らかだった



「………おい、大丈夫か?」

「うん。ごめんちょっと酔った……。神楽ちゃんよく平気だね……」

「別にあたしは何にも感じねぇし」



まだ少し不快な余韻の残る私に比べ、神楽ちゃんは全く体調を崩した様子もなくケロリとしていた。

………妖怪だから、人間よりも丈夫だと言うことだろうか?



「違う。どこまでニブいのだお前は」

「?」


だから、勝手に人の心を読まないでほしい。と、思いながらも師匠の意図が分からず、私は師匠を見上げた。まだ何か用があるのか、珍しく師匠は消えることなくそこにいた。

……まぁ、確かに、師匠が私たちをただ助けるために出てくるわけないか……。

そう思って、私は改めて師匠に向き直った



「何、師匠。どういうこと?これが何だか知ってるの?」

「……まさかてめえ、何かしやがったのか?」



この気が何なのか、私に何かして欲しいのか、疑問を持つ私。
よく分からないが、明らかにお前が犯人だろとばかりに睨み付ける神楽ちゃん。
しかし、私たちの視線ももろともせずに、師匠は相変わらず飄々としていた



「失敬だな。わしは何もしていない。ただ、知っているだけだ」

「――― どういうこと?師匠。この気、一体何なの?」

「この空間の邪気……否、蝕毒とでも言おうか。この山一面にはそれが満ちている。神威、貴様が不快に感じるのはこの蝕毒の所為だ」

「ショクドク?」



聞いたこともない(当たり前だが)造語に首を傾げると、隣で神楽ちゃんが疑わしそうな顔で言った



「あたしは何も感じないけど」

「当然だ。この蝕毒は妖怪には何の影響もない無害なものだからな。見えるどころか感じもせん。これは人間にのみ作用する」



成る程、だから私だけ気持ち悪かったのか。
今は不快感こそないが、何だか少しだけ、皮膚がじわじわとさいなまれているような感じがある。別に体調に影響するほどではないが、気持ち悪いものは気持ち悪い



「人間がこの空間に入ったからと言って、すぐに死にはせん。が、人間が一定以上この空間にいれば、肉体をこの蔓延(まんえん)している毒に侵され……」

























「――― やがて、半妖になる」











人間を、半妖にする毒。





山に入ってからと言うもの、半妖ばかり襲ってくるのはそれが理由か。私は内心にあった疑問が解決して納得した。が、すぐに師匠の台詞に危機感を感じた



「じゃあ、私も長くここに居たら危ないんだね」



人間がこの山の中にいたら半妖になってしまう。と、言うことは私もうかうかしてはいられない。早くこの山を下りなければ半妖にされてしまう。しかし、焦る私を見て師匠は軽くそれを否定した



「まさか。仮にも『生きる四魂の玉』。貴様なら冥界の中でも半永久的に生きられるわ」

「……?危ないから、忠告にきてくれたんじゃなかったの?」



師匠は冥界で「急げ」と言っていたし、妖怪である殺生丸様と神楽ちゃんに蝕毒は効かない。つまり、人間の私は蝕毒で半妖になる危険がある。と言う忠告をしにきてくれたのでは?
と、そう思った私を見て、師匠は意味ありげに微笑んだ








「――― そう。これは、“忠告”だ。」

「………。」






意味不思である。



しかも、何だろう。なにか嫌な予感しかしない

















「――― 何をしている。早く来い」

「へ?」

「暇つぶしだ。このわしが直々に水先案内人をしてやろう」



















(………どこに?)











「急いだ方が良い。と、言わなかったか?」

「?」














そう言って、先を歩く師匠の言葉の意味が分からず、私と神楽ちゃんは、その場で顔を見合わせた













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  1. 2013/07/26(金) 01:25:40|
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