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狂乱壊
荒らし・迷惑行為・中傷などはおやめください。(それらに準ずるコメント類もこちらの一存にて削除させていただきますのでご了承ください)

そして物語の准章は忌み子の過去に干渉する




















社の扉を開けて入り込んだ瞬間、映ったのは美しい草原だった


















(―――………あれ?)










想像していた内装とはあまりにかけ離れたその風景に、思わず拍子抜けする。が、すぐにそれは普通は有り得ないと言うことに気付いた



「……何ここ」




と、そう呟いたのはかごめちゃんだった。
無理もない。と言うか、他の皆もそんな感じだったと思う。
山の中は蝕毒の所為でどこに行っても薄暗く、不気味で薄気味悪い空間だったのに、この社の中に入った途端、世界は爽快な青い空と豊かな緑で溢れていた。あまりのギャップに、あまりに予想外の光景に、驚くなという方が無理だろう



「……幻覚。でしょうか」

「違う……これは幻覚じゃない」



説明しようとしたが、その言葉は出なかった。その草原の中に、彼が……半妖の子供がいた。しかも、一人ではなかった。草原で遊んでいた彼は、何か気配に気付いたのか、勢いよく顔をあげ、そして満面の笑みを浮かべた



「……お父さんっ!!お母さんっ!!」




そう言って、駆けていく。ひどく嬉しそうな笑みを浮かべて、彼は巫女の衣裳に身を包んだ母の胸に飛び込んだ。そして父を見上げる。人間の姿にも見えたがすぐにそれが変化(へんげ)だと気付いた。母より一回りも二回りも大きな体で、それでも父は笑う。大きな傷のついた形相は恐ろしかったが、それでも邪気なく笑うその顔は、子への愛情に満ちていた



「………。」



とても幸せそうな顔をしている。




人間と妖怪、半妖と言う家族だったとしても、彼らは人畜無害な、どこにでもいる普通の平和な家族に見えた


















―――― しかし、その幸せな光景は続かなかった






突如として、美しい笑みを浮かべていた母親が消えた。戸惑う子供をよそに、そのまま父親も消えてしまう

戸惑いから焦りの色に顔を染める子供の顔に、投げ付けられたのは小さな小石だった。
小石が子供に当たると同時に、周りの風景は草原から村へと一変した。小石が当たり、よろめいた子供の額から血がしたたる。それを見たかごめちゃんが、思わずと言った様子で子供にかけよった。そして、私は次に聞こえた大声に反射的に肩をすくめた



「――― この“忌み子”めっ!!」



その罵声と共に、小石は一つでは終わらず、次から次に飛んできて子供を襲う。かごめちゃんが抱き締める様にして子供を庇おうとしたが、その腕はかごめちゃんの体ごと、半妖の子供をすり抜けた。どうやら、こちらからの干渉は不可能らしい。それでもかごめちゃんは必死に子供を庇おうとしたが、投げ付けられた小石はかごめちゃんの体をすり抜けて子供に当たった



「出ていけ!!」

「こっちへ来るな!!」

「………っ!!」



飛んでくる小石から子供を守ろうとするかごめちゃん。しかし、その努力も虚しく全ての現象はかごめちゃんをすり抜けて子供に当たる。
子供は動かない。恐怖で足がすくんでいるのか、両手で顔を庇うだけで逃げようとしない。
子供は泣く。小石から受けた傷の痛みと心ない言葉を受けての痛みに対して。



しかし、大人の、人間たちの手は全く戸惑いもしなかった。一切手を緩ませなかった













「不吉な……」

「汚らわしい……」

「化け物……」

「死ねばいいのに……」

「生きる価値もない……」



そして、こだまする悪意なき加害者の声。まるで自分達が何一つ悪いことをしていないかのように




「“忌み子”………」

「“忌み子”め………」




呪うように、染み付けようとするように、人間の言葉がその世界に響き渡る。



子供がうずくまり、耳を塞いでも、まるで脳裏に刻み込ませ様とでもするかのように、その言葉は響き続ける










「“忌み子”」


「“忌み子”」「“忌み子”」


「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」



「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」



「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」





「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」「“忌み子”」









空間が歪む。




世界が歪む。






絶望したかのような子供からは暗いオーラが溢れだす










(これは………)





薄く弱いそれは、本当に分かりにくいものだったけれど分かる。それは蝕毒の源とも言える“気”だった
彼の絶望とともに溢れだすその気は、本当に注意していなければ気付かない程度の些細なものだった





かごめちゃんにも、もしかしたら見えているのかもしれない
けれど、かごめちゃんの手は彼から離れることはなかった。恐れるでもなくひるむでもなく、ただ必死に、彼を守ろうとしていた



「やめて!もうやめて!!」



けれど、それでも世界は変わらなかった



小石と罵声の中、かごめちゃんの声がむなしく響く



子供はうずくまったまま、微動だにしない
















そして―――――




















「……やだ。もう嫌だ………」







――――― 子供は、泣いていた。















次から次へと飛んできていた小石も罵声はいつの間にか少しずつ消え去りやんでいた
周りから景色が消え、真っ暗な空間が訪れる。世界には、半妖の子供だけが残されていた





「……嫌だよ。一人ぼっちは嫌だよう………。」

「………。」




かごめちゃんが子供に何かを言っている。子供を抱きしめようとしている。慰めようとしている
けれど何一つ、子供には届かず、触れられず、聞こえてさえいないようだった

かくゆう私の頭も、かごめちゃんの声を認識していなかった











―――― 聞いていたのはただ、半妖の彼の悲しい声


















「っ僕を、いじめないで………っ」













それは幼くも小さな、悲痛の叫びだった














「………。」




私は、それを見て少しだけその空間に手を加えた



若干ズレていた空間の歪みを修正した
簡単に言えば、かごめちゃんが半妖の彼に干渉出来る様にしたのだ
私に加工されたその世界は、私の望む結果を見せてくれた。かごめちゃんの腕が、触れられもしなかった彼を今度こそ抱きしめる。まるで、本当の母のように



抱きしめられた彼は、まるで縋るかのようにかごめちゃんに必死で抱きついた。そんな彼を、あやすようにしてかごめちゃんは囁く





「大丈夫……。もう大丈夫よ……」

「うっ……うぅっ……!!」




泣きながら、えずきながら、しゃくりあげながら、幼い言葉で必死で彼は訴える



「……お父さん、お母さん………。会いたいよ。一緒にいてよ。僕を一人にしないで、置いていかないで……っ!!」

「………。」








それは酷く無垢で、無邪気で、まっさらな彼の本心だった








かごめちゃんが優しく子供の頭を、背を撫でる
かごめちゃんの優しさに、包容力に、彼は少しずつ落ち着きを取り戻し、いつしか完全に泣き止んでいた
それに比例するかのように、彼の全身から溢れていた暗いオーラが消え去っていく
彼の暗いオーラを、悲しみを癒したのは、かごめちゃんの霊力なのか、優しさなのか












「怖かったわね。辛かったわね。でも、もう大丈夫だから……」





彼にそう囁くかごめちゃんは、まるで聖母のようだった
彼の母である霞子と言う巫女も、きっとかごめちゃんみたいに、慈愛に満ちた巫女だったんだろう
そうでなければ、彼があんなに安らかな、安心した表情を浮かべる訳がない
かごめちゃんのその行動は、私には決して出来ない芸当だった





かごめちゃんの力は、彼どころか周囲の闇にまで癒すかのように、瞬く間に空間の闇を優しく淡い、光の白の世界を作り上げた。私はその光景を、まるで一枚の天使の絵画でも見ているかのような、神聖な光景を見ているかのような、そんな気持ちで見ていた







































――― だが、その時だった





































「――― この役たたずが」























場にそぐわぬ冷たい声と、月の形を模した杖が、幼い彼とかごめちゃんの体を貫いた

















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  1. 2013/07/26(金) 01:28:25|
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