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狂乱壊
荒らし・迷惑行為・中傷などはおやめください。(それらに準ずるコメント類もこちらの一存にて削除させていただきますのでご了承ください)

そして物語の准章は忌み子の存在に気付く






























わしは、死神鬼は、思わず眼を見張った。











眼の前で起こっていることがあまりにも信じがたく、眼の前の人間がしていることがあまりに無謀で愚かな行為だったからだ




(――― 吸収している)



あの半妖の小僧を利用し、造り出した蝕毒の全てが、勢い良く一人の人間に飲み込まれていく。しかも、あの人間は自ら進んで身体の中に蝕毒を取り込んでいる。
わしだけではなく、殺生丸も、女妖怪も、半妖も、他の人間たちも、全てがその女に視線を注いでいた。
空を、地を、山を蹂躙していた蝕毒の全てが女の腹からその身体に吸収される。あれほど強大化し強力化していた蝕毒が、みるみるうちに薄れ、蹂躙していた領地から消え失せ、ついにはその一切を残さず女の身体に飲み込まれてしまった。
蝕毒を取り込んだ女は、その刹那瞼を閉じ、生えていた羽は消え失せ、そのまま堕天が如く地へ落ちていった。

意識を失い転落していくその女を助けたのは、意外にも殺生丸だった。墜落していく体を空中で受けとめ、そのまま地上へと運び、その体をふわりと降ろした。その光景に、一度意識を現状に戻した



「……その人間が、よほど大事なようだな殺生丸」

「………。」



殺生丸は何も言わない。
ただ、ジロリと睨み付けでもするかのようにこちらに視線をよこした。

だが、そんなことをしても現状は変わらない。もうあの人間はもうおしまいだ。あれだけの蝕毒を体に取り込んだのだ。恐らく半妖化では留まらず完全な妖怪になるか、身体が異形化しむごたらしく死ぬかのどちらかだろう。そう思い、どうなるのかどちらに転ぶのか、簡単な賭けのような余興として見ていたが、何故かいつまでたっても人間の様子は変わらなかった。
その様子に、死んだのかとも思ったが、どうやら違う。死んだの様に眠っているが、本当に死んでいる訳ではない。







――― しかし、ただ眠っているだけのその女は、明らかに異常で異質で異形だった












(――― 何故?何故だ?何故、何も起きない?)




違和感は疑問に、最後には恐怖にも似た異様な感情に変わった。


人間が蝕毒を体に取り込んだのに、半妖化しない。
全ての蝕毒を取り込んで、寧ろ死んでもおかしくない、否、死ななければおかしい状態のはずなのに。














――― 何故?何故だ?















無意識に気絶しているその姿を凝視する






























(――― 何故?何故だ?)






















(――― 何故あの女は、“あの程度で済んでいる?”)














そして無意識に、人間が不変のままである理由を模索する。













――― あの女の力とは、どういったものだったか






――― 致命傷さえ完全治癒させる程の力

――― 蝕毒を遮断する強力な結界を張る力

――― 全ての蝕毒を取り込めるだけの力






そして、先程聞こえた、“生きる四魂の玉”











































その力に、存在に、―――“憶えが、あった”













「その力………、まさか“忌巫女”か!!」





その存在に思い当たった時、その存在が生きていたという事実を認識した時、心の中に沸き上がってきたのは“歓喜”と呼ばれる感情だった




「は、はははは!!今日はなんと言う吉日!!まさかこんなところでまた貴様にあい間見える日がくるとはな!!“忌巫女”!!」










そう。



そうだ。







そうだった。








あの昔の記憶がまるで昨日の事のように思い出せる。


以前とはあまりにもその様子が、雰囲気が違い、すぐには分からなかったが間違いない。その力は疑い様もなかった



「成る程そうか……。犬の大将がいなくなり、どこへやったかと思っていたが、殺生丸に託されていたか……!!」



何故人間であるはずのアレが現在まで生き延びているのか、何故あの時と同じ姿のままなのか、辻褄が合わないことはあったが、そんなことは些末なことだった。沸き上がるのは、物欲。物欲。物欲。湧き水のように際限なく溢れ出る、所有と独占欲の固まりだった



「……そうだ、それだ……。わしはその力が欲しかったのだ!!犬の大将さえいなければ、奴が独占してさえいなければ、わしのものになるはずだった!!」



まるで庇うように“忌巫女”の傍に立つ殺生丸を睨み付ける。狙いは“忌巫女”。ただ一人だった
アレを手に入れるためには障害が、殺生丸が邪魔だった




「あの時は遅れをとったが、今度はそうはいかん!!寄越せ!!それはわしの物だ!!」






気を抜けば我を忘れる。


それほどの勢いで、わしは殺生丸に守られ横たわっているソレに全ての意識を集中させながら手を伸ばし距離をつめた






































「――― いいや?あれは決してお前のモノにはならんぞ?“死神鬼の片割れ”」











聞き慣れもしない声に、呼ばれたこともない呼び名で呼ばれ、味わったこともない痛みに身体を貫かれた





「お前の負けだ。“死神鬼の片割れ”」



音もなく気配もなく、予兆もなく貫かれていた
振り替えると、先ほど問い掛けてきた長い黒髪の男が背後から黒い刀でこの身体を貫いているのが見えた。自分の腹から黒い刃がまるで生えるように突き出ているのを見るのは何とも奇妙なものだった



「………!!」

「呪咬刀。これは切ったもの全てを飲み込む刀。これでお前はコレから逃れることは出来ない」



後ろから、静かな声でそう言う男のおめでたい思考を鼻で笑う。
わしは死神鬼一族の長。そして今や冥界へ赴き、冥界の主として君臨しているわしは、この世の者にしてこの世の者ならず。妖刀だろうが異剣であろうが、もはやわしには通用しない。痛覚こそ感じるものの、そこに外傷も致命傷も存在しない。












――― わしは無敵だ。わしを殺せる武器など、この世にもあの世にも、どこにもありはしない













「……は。残念だったな。この程度の刀でどうにかなる死神鬼では……っ!?」








――― そのはずだった。









が、


























身体が、血が、“疼いた”


















刀から黒い影のようなものが現れる。その黒い影を見た瞬間、何故か身体中の血がざわめいた。かと思うと、その黒い影に身体を侵食され、文字どおり“侵し”“食われ”ていた



「な、んだこれは…っ」

「そうだな。以前の呪咬刀ならば分からなかった。“アレ”を取り込む前ならば」



(―――“アレ”?アレとは何だ?)



「しかし、貴様は………否、誰も逃れられはしない。血の呪縛からは」

「何の迷い毎だ……っ!!」

「血が血を求める。血に血が呼応する。血が血と共鳴し、二つに別れたものが一つになろうとする」



意味が分からない。しかし、それを尋ねる余裕などもはやなかった。全身がじわじわと、しかし、確実に食われていく。腕が、足が、身体が、あらがう事も出来ずに無くなり、じわじわと激痛が身体を駆け巡る。しかし、声帯さえ喰われ、叫ぶことすら出来なくなった身体に、まだ残っていた聴覚が静かな声を律儀に拾う



「………『人を閉じ込め惨めな日々を強要した、貴様が助かり生き延びるなど、許しはしない。同じ目に合わせなければ気が済まない』そう鳴いている」

「……っ!!」



そう、まるで道化じみた声で芝居じみた台詞を抜かす男を睨み付けるのが精一杯だった




(く、くそ!!ふざけるなよ!?わしは死神鬼だぞ!!死神鬼一族の長にして冥界の主!!そのわしがこんなところで……っ!!)



「所詮、貴様はその程度だったというだけの話だ。自分の出生の影も知らず与えられた地位に疑問も持たずに蜜を吸い続けた傀儡の当主、死神鬼一族の掌で踊らされただけの無知な兄君様よ」

「………っ!!」

「――― 名も知らぬ弟に引きずり込まれろ。“死神鬼の片割れ”」










男の呟く理解不明な言葉などもう聞きたくはなかった。わしは喰われながらも忌巫女に手を伸ばした。殺生丸の傍らに倒れるその女に、必死で手を伸ばすが届かない。あまりに距離が開ききっていて、かけよりでもしなければその距離は縮まらない。しかし、もう足も絡め捕られ、喰われている最中だった。もう足もない。胴もない。その身体に近づくことも出来ない。――― それでも、手を伸ばし続ける

















(――― 忌巫女!!忌巫女!!忌巫女!!)









































声にさえならなかったその絶叫は


































――――― ついに、わしの身体ごと、漆黒の刀に喰いつくされた


































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  1. 2013/07/26(金) 01:30:37|
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