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狂乱壊
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死してなお、後悔するのか

『死してなお、』シリーズの続きその⑬
パクノダが死んだシーンカルト視点




















眼を覚ましたカルトは、今までの沈黙が嘘のように、流暢に喋れるようになっていた













「苦しめばいい。そう思ったんだ。」

「………。」



少女の姿からは想像も出来ない様な、しわがれた声。
どれほど喋っていなかったのか知らないが、それはひどく長い年月を感じさせた。
けれど、それは最初のうちだけ。
話していくうちに喉が声帯が役目を思い出したかのように、カルトの声は紡がれる程に徐々に若返っていき、ついには年相応の高いものに戻っていった。

――― それでも、紡がれる言葉の重さはまるで変わらなかった。

まるで募りに募らせ溜まりに溜めていたものを圧縮し凝縮したような、暗黒にも似た重い声。
フェイタンはそんなカルトの言葉をただ黙って聞いていた



「苦しめばいい。どうせ幸せはすぐに消える。いつもいつもそうだった」



うつむいたカルトの表情は読めない。
けれど、今どんな想いを胸に抱いて話しているのかは眼に見えて分かった。
声に込められる怒り。それはカルトが初めて表に出して見せた感情にも似ていた。
けれど、今のカルトの怒りは、拷問部屋に閉じ込めたあの日に初めて見せたあの僅かな侮辱への怒りのレベルなど比ではないくらいだった。込められた怒りはパクノダだけではなく全ての生命に向けられているかのように深く、重かった。



「“あの時”も、そうだと思ったんだ………」



















あの時。






このアジトに連れて来られたのだと、自分が他の競売品とともに盗まれたのだと知りも感づきもしなかったあの時。



















――― その時にまで、カルトの回想は遡る。






































































幻影旅団のアジトで、競売品に紛れた寒い寒い保存庫の中で、眼を覚ました時カルトの頭はまだ正常に働いていなかった。
それはそうだ。不老不死とは言えカルトの肉体構造は人間と一緒。凍死体にされていた身体と脳は未だ重く、意識を取り戻したばかりのカルトにはその寒い保存庫の中から力を振り絞り、自分を中途半端に閉じ込めていた保存庫の蓋を押し上げ、暖かい常温である外界に這い出るのが精いっぱいだった。
何故外界に這い出たのか。そう聞かれたなら答えは一つ。箱の中にいるのはひどく寒かったから、それだけだ。寒かったから、そこから出たかったから、入れられていた箱から出られそうだったからとりあえず出てみた。その時カルトの中にあったのはそんな単純な思考回路だった。
保存庫の外に出て、外の空気に触れた事で、寒さで麻痺しきっていた感覚が蘇ってくるのをカルトは感じた。無感だった手足にしびれが、そしてこわばりにまでなり、数秒後には四肢が自由に動かせるまでに、カルトの身体は回復していた。
それでも自分の置かれている状況をまるで把握しきっていなかったカルトは、ただぼんやりと、全く覚えのない不衛生な廃ビルの中を、無意識にグルリと見渡した。






見渡していたカルトの視線が、一つの事柄に眼が付き止まった。
カルトには彼らが何故そうなったのかはまるで分らなかったのだけれど、何やらその場にいた全員が一人の人間を見つめていたのは分かった。
誰一人として、カルトには気付いていない。
それだけ、その空間にいる誰もが、カルト以外の全ての人間が集中してある一点を見つめていた。

























――― 女だ。


















一人の女だ。























その場にいる全ての人間の視線が、その女に集中していた。
その光景を見て、カルトは周囲の人間の顔を確認した後、その視線に倣うかのように女に眼を向けた。
周囲の人間の反応は様々だった。女を警戒している者や、敵意を向けている者、疑念を抱いている者、そして、女を信じようとしている者。さまざまな視線が、さまざまな感情が、全て女に集中して注がれていた。




するとおもむろに、女はどこからか銃を取り出した。


女は銃口を向けている。
まるで、この場の全ての人間が敵であるかのように、銃を構えている。
女が銃を眼の前の集団に向けて打つ。周りの人間は誰一人として動かなかった。
そしてその銃弾の6発が6発とも外れることなく、集団の中の何人かに命中した。

すると、女はそのまま倒れた。
瞳の中の光は失われ、そのまま眼を閉じ、地に倒れる。
女がどうなったのか、どうしてそうなったのか、一瞬周囲の誰もが理解できない様な顔をしたけれど、カルトには女がどうなったのかすぐに分かった。














――― そう、確認するまでもない。















女はそのままこと切れて、死んでいた。


















――― カルトは、その女の“死”自体には、特に何も思わなかった。


当然だろう。いくら女の死が唐突でも、原因不明の死でも、とりあえず死には変わりない。
例えどんな死だろうと、それが死ならば、カルトになんら恐れる理由も脅える理由も悲しむ理由もない。
カルトにとっては、死などもはや何も感じない程度の現象だった。


見慣れた死だ。
慣れ親しんだ死だ。


遠目だろうと、見間違えるはずのない完全な終わり。



そんな女の終わりを、遠いなりにも真横から、カルトは見ていた。












そうカルトは、状況など全く理解できていなかった。
訳が分からなかったのはカルトも同じだった。

















けれど、





そんな、























そんなカルトの中にも、芽生えたモノはあった。














何年振りか何十年ぶりかは分からない。
けれど久しぶりに感情が揺さぶられるのをカルトは直に感じていた。














が、カルトの感情を揺さぶったのは女の死ではない。



死んだ女が死ぬ直前に見せた、その眼だった。













今、眼の前で死んだ女。
それが誰なのかカルトは知らない。
誰なのか知りたくもないしどうでもいい。
ただ、死ぬ前に見せたあの女のあの眼は、銃を向けた女のあの眼は、覚悟の眼。
人を殺傷できる銃を構えているのに、まるでこの場の全ての人間を信頼していて、その上で何かを託そうとしているような眼をしていた。






自分の命を犠牲にして、自分の選んだベストな選択を実行する、そんな眼。









そして、そうして、そんな眼を一切濁させることなく揺らがせることなく、女は静かに死んだのだ。



そうやって死んだ女の死に顔は、やはり眠っているかのように、満ち足りているかのように穏やかだった。













美しくさえ見えたその死に顔、





























けれど、それがカルトの中のなにかに……









































――――― 逆鱗に、触れた。







































(――― 許さない)

















じわじわと、ぐつぐつと、煮えたぎる様に湧き上がってくるこの感情。
カルトは自分の神経が逆撫でされているのを直に感じていた。













(―――………許さない。)












そう、そんな終わりは許さない。















(――― 死ねないのに、僕はどうあがいても死ねないのに、どうしてお前は死ねるのか。)








しかも、そんな安らかな顔で。





理不尽だった。
不条理だった。
不公平だった。











そう、どうせ死ぬならこの世に恨みを残して怨念のように生にすがり付いて誰かを罵りながら幸せな奴らを祟りながら死ねばいい。今までのあいつらみたいに。
なのにそんな、何一つ未練など無いと言わんばかりの、はればれとした死に顔を晒すな。そんな美しくも潔い死に方など絶対に
























(絶対に………――――)








































































ユ  ル サ  ナ イ 。





 






   

























だから、カルトは歩を進めた。


だから、カルトは爪を自分の腕に喰い込ませた。


だから、カルトは自傷し血を流した。





だから、カルトはその女に自分の血を与えた。







































――― 全ては、その癇に障る死に様を見せつけた女を生き返らせるために。
































もっと足掻いて足掻いて、苦しんで痛んで悲しんで辛そうに死ねばいいと、そう呪いながら生き返らせた。






























―――― なのに………―――





















(なのに、その結果はどうだ?)
















生き返ったその女は後悔することなく、カルトの嫌がらせをまるで恩を受けたとばかりに優しくしてきた



(優しさなど、いらなかった。)





微笑んだまま、慈しむ。その手にカルトを傷つける意思はなかった



(暖かい手など、いらなかった。)






パクノダが、生き返ったパクノダがカルトに与えたもの。
それこそまさに、カルトにとって予想外で予定外で想定外だった。



(――― こんなはずじゃなかった)



だから、カルトはその手を振り払おうとした。

突っぱねれば、弱者であることを盾にして、彼女の命を盾にして、その優しさを嘲笑い無駄にして、その心を足蹴にしてしまえば。そうして、嫌われてしまえば、いつものように、優しい彼女も今までのあいつらのように化けの皮をはがすと、そう思った。


そうすれば、不安と恐怖に脅え生き返ったことを後悔するだろうと



















なのに、










なのにそれでも感謝され、あろうことかお礼まで言われてしまった。















そんな女に、どうしたらいいか、分からなかった。
自分はあんなことを言ったのに、そんな眼に合わせたのに、その眼は依然と変わらず、優しさと、慈愛に満ちていた。
ただ、それは、カルトの中にある何かを癒し、同時にカルトの中にある確実に傷つけてはいけない何かを傷つけた。





だからこそ、カルトは吐く。吐き出す。









嫌な記憶など無くなればいいと、願うように












「後悔させて、恥かかせるために生き返らせたんだ」

「………。」

「幸せなんて感じさせるために生き返らせたんじゃない……」

「………。」

「苦しんで苦しんで、後悔して死ねばいいんだ………っ」




まるで、敗北した時のような、苦虫をかみつぶすような、負け惜しみを言うように、往生際が悪い人間のようにカルトはそう言った。







































フェイタンはそれを、カルトの言葉を、ただ静かに聞いていた。
勿論、カルトの言葉は主観的過ぎて、感傷的すぎて、カルトが何故そんなことを呻くように呟いているのか、事情を知らないフェイタンにはまるで分からない。
















けれど、

























「許せなかった」と、カルトは言った。
「後悔しろ」と、カルトは繰り返した。








































――― けれどそれは、パクノダを生き返らせたことを、パクノダを傷つけたことを、「後悔しろ」と言ったカルト自身が後悔しているように、フェイタンには思えてならなかった。







































 









*****************************



そうして。『可愛い娘の毒遊び(ポイズン・ピンク)』は誕生した。















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  1. 2014/06/19(木) 16:38:31|
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