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狂乱壊
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今日、僕は君に気付く、君は気付くのを待っていた。

『僕、君』シリーズの続きその②












「………またか?」

「またです」






ミルキ兄さんの部屋で、呆れたようにミルキ兄さんにそう言われて、僕は重々しく首を縦に振った。



またも昨日(いや、正確にはおととい?)と同じ現象が起きたのだ。

火曜日に寝たはずの僕が起きた時には、それは水曜日ではなく木曜日でした。確かに火曜日に寝たはずなのに、起きたら木曜日。
どういうことかって?僕が聞きたい



「しかも、また樹海で一晩寝ていたみたいで……」



そう、火曜日。確かに僕は自室のベッドで眠りについた。
だから、目覚めた時には僕は自室で水曜日を迎えていなければおかしい。なのに、今日僕が目覚めたのはこれまた樹海の中。まるでベット代わりにでもしていたようにミケの体毛の中で寝ていた。しかも、迎えたのは木曜日。またも一日分の記憶が抜けていた。
いよいよ自分の身体に起きている正体不明の現象が気のせいではないと確信じみてきて、僕は思わず頭を抱えた



「どうしたんでしょう兄さん………。僕は頭がおかしくなったのでしょうか………」

「あ~………。でも、一日おきに記憶が消えるなんて話聞いたことねぇしなぁ………」



相当落ち込んでいる僕に気を使おうとして、珍しく兄さんが悩んでいる。
しかし、何のフォローも気のきいた言葉も思い付かなかったらしく、困った顔をして結局どこからか本を一冊取り出してパラパラとページをめくりはじめた



「でもさ、昨日のお前、確かに起きてたんだぜ?」

「ッホントですか!?」

「あぁ。」



落ち込んでいた声を張り上げ、ガバッと顔をあげると、ミルキ兄さんはひとつ頷いた



「でもさ、どんなに話しかけてもお前全く反応しなくってよー……。無言のまま足早にまた樹海に入っていってその後知らねぇんだよ。一応執事数人に追わせてみたけど撒かれたって言うし、お前器用に庭にある監視カメラ避けてたし」



そう言いながら、パラパラと本をめくり続けるミルキ兄さん。
ミルキ兄さんの証言が確かなら、どうやら昨日の僕は一日中寝っぱなしで過ごしていた訳ではないらしい。一日中寝ていたのなら、僕に水曜日の記憶が無いのも当然なんだけれど、そうではない以上、僕は僕ではない意識で水曜日を過ごしていたことになる。
そして、ミルキ兄さんは話しながら、とあるページを開いてピタリとその手を止めた



「でも、お前それ覚えてないんだろ?」

「…………はい。」



そう、昨日のこと。水曜日のこと。何一つとして覚えていない



「だからさ、もう一つ、考えられる可能性がこれな訳だ」



そう言って、開いていた本のページの一文を見せつけられた



「・………解離性同一性障害?」

「そう。簡単に言えば『多重人格』だ」

「多重人格………」



言葉を繰り返すと、ミルキ兄さんはすらすらと本の中身を流れるように朗読してくれた



「『自己の精神を守るため、人は悲しみの記憶を封印してしまうことが稀にある。その時に封印した記憶が、何かの拍子で別の人格として表に出てくる。それが、解離性同一性障害である』」



すらすらと読み上げたミルキ兄さんは、更にこう続けた



「お前、何か心当たりないのか」

「心当たり……」



最近受けた、ショックなこと。
それは、やはり、あれしか思い浮かばない。
眼の前でフェイタンが死んだ、あの出来事。

それ以外、何も思いつかない。



けれど悲しかったのは確かとは言え、人を何人と殺してきて、何人もの死と遭遇してきた暗殺者である僕に、今さらたった一人の男の死が、僕の多重人格の引き金を引いたとはとても考えにくい。けど、最近あったショックなことと言えばそれくらいしか思い浮かばない



「まぁなんにせよ、何度も続くようなら気をつけた方がいいぞ?ここにも書いてあるけど『もう一つの人格は徐々に主人格よりも表に出ている時間が長くなり、いつしか乗っ取られてしまった』なんて例もあるらしいし。まぁ本当かどうか疑わしいもんだけどな」

「………え?」



そんな恐ろしい言葉が、あっさり兄の口から飛び出てきて思わず固まった。
そして、そのまま手を動かして凝視する。

今は何の不自由もなく動かせていたこの手が、自分の意思ではなく他人の意思で動くようになる。
段々それが酷くなって長くなって、遂には意識を乗っ取られて、そして、僕と言う存在はそのまま―――。











そこまでを考えてしまって、僕は思わず自分の身体を抱き締めた。
心なしか身体が震えている気がする。何だか寒気までしてきた。
そんな見るからに怯え始めた僕を見て、失言したと察したらしいミルキ兄さんは、慌てて「あーうー」と珍しく要領を得ない奇声をあげた後に、こう言った



「じゃあさぁ。もういっそ盗聴すればいいんじゃねぇ?」

「え?」



その言葉に、身体の震えが弱くなる。
顔をあげた僕がすがるように映ったのか、ミルキ兄さんはどこかまくしたてるように早口でこう言った



「確かどっか別の本にさ、『多重人格を治すには主人格が自分の中に別の人格がある事を自覚する必要がある』みたいなことが書いてあったんだよ。ほらお前、確か情報収集用にそーゆー能力持ってただろ?自分に盗聴用の紙切れ仕込んでさ、それこっそり録音して次の日聞いてみればいいんじゃねぇの?」



なるほど、良いアイディアだ。

兄からのアドバイスを聞いて前向きに考え直した僕は、そのまま兄に礼を言ってから部屋を出た。










そうだ。もし本当に僕が多重人格で、僕が意識できない認識できない僕が僕の中にいたとしても、それを怖いと思うのは全くその僕に対し無知だからだ。
ならば、僕の中に誰かいるのか、それはどういう人物なのか、それを確かめて知ってしまえばいいのだ。

そして、夜になるのを待った僕は自分に盗聴用の紙を仕込む。
そして、明日の僕に見つからないように自分の形を模した紙細工と録音用のテープレコーダーをセットしたものを隠し、そのまま眠りについた。






























――― 起きた僕は、すぐさま携帯を掴んで今日の日付を確認した。
次の日……と言うか、起きた時にはやはり、金曜日ではなく土曜日になり、早い話がまた一日分の記憶がないまま眼が覚めた。
起きた僕はとりあえず一回深呼吸して気合いをいれるようにパンパンと両頬を軽く叩いた。
そして、勢いよくベッドから飛び起きると、隠しておいた紙細工とテープレコーダーを手に取る。
そして、もう一度深呼吸してからその内容を聞くため、操作ボタンを押した



「………。」



さぁ誰だ。僕の中にいるのは………!!



少し緊張しながら、昨日の『僕』の反応を、第一声を聞いた。最初に聞こえたのは、シーツの擦れる音。そして、ふあぁと気の抜けた欠伸。そして、舌打ち。
おぉこれはかなり性格悪そうだぞもう一人の僕………!!
等と思っていると、低い低い、自分でも出したことの無いような不機嫌そうな呟きが聞こえた









『相変わらず柔らかすぎて寝心地悪いベドね………』









瞬間、口元がひきつった。



………この独特なしゃべり方は………。





























その日、僕は出来るだけいつものように過ごした。
昨日樹海と言う庭から籠って何していたんだと不審がる祖父を適当にごまかし、どこか心配するような母を宥め、いつものように修行を行い、ほどよく身体と心がぼんやりしたところで、僕は枕元に紙を置いて寝た。



『ねぇ、もう一人の僕。君はもしかしてフェイタンなの?   カルトより』


























すると次の日(と言っても日付的にはまたしても一日分ワープしているのだけれど)。
僕を目覚めさせたのは目覚まし機能のアラーム。録音した覚えすらないその機能の中で僕の声が僕じゃないしゃべり方で言う。決してうるさかった訳ではないのに、その声で僕は飛び起きた





















『――― なんだ。意外に気づくの早かたねお前』





















そのアラームに、信じられない気持ちになりながらもどこか納得した気持ちになり、思わず毒づくように呟く



「………あんの男」



そして、気づいてしまった。あの日、フェイタンが死んだあの日に出会ったフードをすっぽりとかぶったあの不気味な男。そしてその男に聞かれたあの胡散臭い言葉








『お前の寿命の半分で、そいつを助けてやろうか』













「半分って、こういう意味だったの………」







糸の切れた操り人形のように、崩れ落ちるようなこの感覚。笑えばいいのか泣けばいいのか分からないまま、僕はただ頭を抱えた。




















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  1. 2014/07/04(金) 13:59:22|
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